メタバースとは
米フェイスブックは2021年10月28日、正式社名を「メタ・プラットフォームズ」とすると発表したことにより一躍メタバースという言葉がバズワード化しました。
対外的には「Meta(メタ)」を使用するとのことです。なおフェイスブックはSNSの名称として利用を継続するとのこと。証券コードのチッカーシンボルは12月1日に「FB」から「MVRS」に変更とのこと。
創業者社長のマーク・ザッカーバーグ氏は「メタバースは、多くの企業、つまり業界全体にまたがるビジョンです。それはモバイルインターネットの後継者と考えることができます。」と述べています。
マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏も、個人ブログの中で、「今後2、3年のうちに、ほとんどのオンライン会議は、2Dのカメラ画像のグリッドから、デジタルアバターによる3D空間であるメタバースに移行するだろう」と述べました。マイクロソフトも来年にはTeamsで提供をはじめるとのことですので一気にメタバースの会議が増える可能性がありますね 10年に一度のビジネスチャンスでしょう
2004年創業の同社はグループ全体の利用者が36億人と世界最大のSNSですが若者のFacebook離れはかなり深刻だったとの報道もあります(以前は20代は6割が加入していたが今では3割程度というデータもあります)。もっともインスタグラム(Instagram)も同社が買収しているので若い人はインスタ中心という感じでしょう
ただ最近は内部告発が起きていて企業体質や管理体制への批判が高まっていますね。
社名変更によってイメージを刷新し、仮想現実(VR)などの成長領域に注力していくとのことです。
とくに「メタバース」構築へ1.1兆円を投資するのは私が予想したとおりこれからは仮想空間やNFTなどがモバイルインターネットの次に来ると確信しているからでしょう。
メタバースとはちょっと昔に流行ったセカンドライフのような世界です。あつもりなどのゲームで普及していますね ホロライブも人気です
映画では レディ・プレイヤー1(スティーヴン・スピルバーグ監督、森崎ウィン出演) 原題 Ready Player Oneを見ると最もよくわかると思います。アマゾンプライムでは無料でしたので私も見ましたがとても楽しめました!
また「竜とそばかすの姫」やゲームでは集まれどうぶつの森 通称あつもり などが世界観が近いでしょう。
今後Metaはさらに仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの技術を組み合わせて仮想空間で遊んだり交流したりできるプラットフォームを作り、おそらく暗号資産(仮想通貨)、NFTなどへと進出するでしょう。
さらに詳しくメタバースとは何か、やり方他わかりやすく説明していきますので最後までお読みください。
- メタバースとは何か
- セカンドライフ Second Life
- Facebookの動き モバイルインターネットの後継はメタバース
- メタバースは本当に普及するのか普及しないのか
- 事例 MetaのConnect 2021で発表された主要なVRプラットフォーム
- マイクロソフトのメタバース
- VRチャット VRChat
- フォートナイト Fortnite
- マインクラフトMinecraft
- ロブロックスRoblox
- あつまれ どうぶつの森(Animal Crossing: New Horizons)
- ディセントラランド(Decentraland)
- DAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散型組織)
- 日本企業の動き
- 法的課題
メタバースとは何か
2021年にFacebookが社名をメタバースプラットフォームズに変更したことで一躍注目を浴びたメタバースとはMetaとUniverseの合成語で、人類が暮らしているユニバースと次元が異なる世界という意味です。元々はニール・スティーヴンスンの1992年のSF小説スノークラッシュの中で大勢の人が自由に行動し交流できる仮想世界のことをメタバースと読んでいることに起因します。絶版になって高額の価格が付いていたこの小説は日本でも2022年1月に復刻されます。
セカンドライフ Second Life
メタバースが注目されたのはセカンドライフというサービスで2006年頃に話題になりました。当時日本でも電通などが強力にプッシュしていたことを記憶している方も多いと思います。このサービスはリンデンラボという会社が2003年頃にはじめたもので、当時はリンデンドルという通貨で仮想空間のセカンドライフ内でモノの売買ができ、特に土地が売買できるということで注目されました。残念ながらブームは続きませんでしたが現在もコアなファンがいるためセカンドライフは存続しています。
セカンドライフが普及しなかった原因
セカンドライフは最盛期でも全世界で会員数は400万人程度だったとされています。日本では当時mixiなどのSNSが登場し人気を博しました。
普及しなかった原因はいろいろ考えられますが、ひとつには当時はまだガラケーの時代であり通信速度が今よりもはるかに遅かったこと、パソコンでセカンドライフを楽しむためには高性能のグラフィック機能を搭載したパソコンが必要だったこと、広告先行でマーケティングを行ったために人々の交流というプラットフォーム戦略®で最も重要な要素が希薄になってしまい広告だらけの仮想空間になってしまったことなどがあげられるでしょう。
Facebookの動き モバイルインターネットの後継はメタバース
2021年にメタバースが注目された最大の理由はFacebookの社名変更ですが、それよりもかなり前から同社はメタバースへの布石を打っていました。
2014年にはFacebookはVRヘッドセットと呼ばれるゴーグルのような機器を販売しているOculusを買収しました。
2021年に創業者のザッカーバーグ氏は社員向けにメタバースについての講演を行っていますがその後の7月に行われたのがThe Vergeによるインタビューで重要な発言をしています。
The metaverse is a vision that spans many companies — the whole industry. You can think about it as the successor to the mobile internet.
「メタバースは、多くの企業、つまり業界全体にまたがるビジョンです。それはモバイルインターネットの後継者と考えることができます。」
出典
さらに9月にはメタバース構築のために5千万ドルの投資を行うこと、10月にはメタバース内でのコンテンツ制作を行うクリエイター支援に1千万ドルの基金を設立すると発表。10月末に社名をMetaプラットフォームに変更という流れになっています。多額の投資を行い本気でメタバースに注力していくことがひしひしと伝わってきます。
メタバースは本当に普及するのか普及しないのか
メタバースは本当に普及するのか、セカンドライフのようになるのではないかといった懐疑的意見も多い中ザッカーバーグ氏のみならずマイクロソフトのビルゲイツ氏もメタバースへの取り組みを公言しました。
2006年時点と大きく異なるのは技術的な進歩です。
具体的にはネットワークの通信速度の高速化により高性能のパソコンでなくても利用可能になったこと、PCのみならずスマートフォンでも利用可能になったこと、サーバー性能の向上による同時アクセス数の増大が可能になったこと、没入感が得られるVRセットが高機能にもかかわらず3万円代まで安価になってきたことなどが挙げられるでしょう。
PWCはVR・ARの世界は2019年の465億ドルから2030年までに1.5兆ドルに成長すると予測しています。
事例 MetaのConnect 2021で発表された主要なVRプラットフォーム
以下のブログ記事に詳しく書かれています
簡単に説明すると以下のとおりです
Horizon Workrooms (Meta Quest)
FacebookあらためMetaによる会議室のメタバースサービスです 詳しくは上記URLをご覧いただければと思いますが、簡単に言えば参加者はVRヘッドセットをして会議に参加するとまるでその場にいるような没入感を持って会議ができるというものでZoomとの連携もしています。手や頭の動きや口の動きも反映されて、近くの人の声は大きく聞こえるなどの工夫もしてあります。さらにバーチャル上の黒板に資料を投影して説明したり、自分のPCを投影させて文字などを入力することもできます(但し対応のキーボードが必要)。
ほかにもゲームやフィットネスなどのサービスが開始されています。
また以下の動画のように Horizon Home Horizon World も公開されています
家に居ながらにして友達と一緒に遊んだりパーティをしたりすることが体験できます
Horizon Home
Horizon World
マイクロソフトのメタバース
マイクロソフトもイベントにて2021年11月2日にMesh for Teamsを発表しメタバースへの本格展開を明らかにし、2022年前半にプレビュー版を公開する予定です。Metaと同様 VRヘッドセットのHoloLens2を使ってアバターとして会議に参加することでリアルな映像と混在した形でTeamsでの会議が行えます。さらに microsoft translatorというツールを使って同時通訳もでき、議事録も作成できるようですのでB2Bの世界での覇権を狙っているのかもしれません。なおHoloLensは2016年から発売していますから早い段階からマイクロソフトはメタバースへの本格参入を検討してきたことがわかります。
詳しくは英語ですがこちらのブログで紹介されています。
また以下のような動画も公開されていますのでチェックしてみてください
VRチャット VRChat
VRChatはVRとSNSを組み合わせたもので、コミュニケーションを目的にした無料で始められる新しいSNSです。2017年に開始したアメリカのVRChat Inc.運営のソーシャルVRプラットフォームで、SteamまたはOculus Storeにて無料ダウンロードできます。参加者はOculus Quest、HTC ViveなどVRヘッドセットを使用してプレイできます。デスクトップ版もあるため制限はあるものの誰でもプレイ可能です。
VRChat内には「ワールド」と呼ばれるバーチャル空間をユーザー自らがUnityなどで作ることができ他のユーザーとの交流を楽しむことができます。ボイスチャットでコミュニケーションを取ることができるだけでなく、身振り手振りのコミュニケーションも可能です。
イベントやコマース、通貨などがあります。Metaの方向性と近いといえるでしょう。
フォートナイト Fortnite
フォートナイトは、Unreal Engineというゲームエンジンを開発しているEpic Gamesにより2017年に公開されたオンラインゲームです。バトルロイヤル、世界を救え、パーティーロイヤルなどのゲームモードがあります。
2020年4月にはトラヴィススコットが、さらに8月に米津玄師がライブを行い話題になりました。Youtubeで動画が公開されていますのでチェックしてみてください
トラヴィススコットのホロライブでは関連グッズなど20億円を売り上げたとの報道もあります。
Travis Scott and Fortnite Present: Astronomical (Full Event Video)
米津玄師 2020 Event / STRAY SHEEP in FORTNITE(2020.8.7)
マインクラフトMinecraft
マインクラフトは 2011年にリリースされた仮想世界内にブロックでできたさまざまなものを配置して自然風景街並みを自分自身で作り、サバイバル生活を楽しめたり、建築できるサンドボックスビデオゲームで略称は「マイクラ」で世界で最も売れたゲームソフトです。
2014年にマイクロソフトが25億ドルで買収しており、今後の同社のメタバース戦略の基盤のひとつになると予想されます。海外では小中学生の間でも人気です。
スキンや衣装などを購入できるマーケットプレイスやマインクラフトコインという ゲーム内の通貨もあります。
ロブロックスRoblox
ロブロックスは、2006年にリリースされたユーザーがゲームをプログラムしたり他のユーザーが作成したゲームをプレイしたりできる、オンラインゲーミングプラットフォームおよびゲーム作成システムです。ゲームは2000万以上あると言われ、無料でプレイでき、ゲーム内購入は「Robux」と呼ばれる仮想通貨を通じて利用できます。月間アクティブユーザー数は1億6400万人を超えており特に米国で人気で、16歳未満の子供たちの半数以上がプレイしていると言われています。
あつまれ どうぶつの森(Animal Crossing: New Horizons)
通称あつもりで有名です。任天堂より2020年3月20日に発売されたNintendo Switch用ゲームソフトでどうぶつの森シリーズの第7作目。約半年で世界中で2600万部も売れて社会現象を巻き起こしました。ユーザーが自分の世界を作って他のユーザーと交流したりすることができるゲームです。企業や自治体も積極的に広告を掲載しています。
ディセントラランド(Decentraland)
イーサリアムのブロックチェーン技術を利用したVRプラットフォームです独自トークンはMANA(マナ)です。DAOなので管理会社はありません。DAOについては下記参照。
DecentralandはVR空間内の土地や建物、アバターなどあらゆるものがNFTでつくられており、NFTマーケットプレイスで売買できたり、他のNFTゲームとNFTを相互利用できたりします。またユーザーが新たなNFTのアイテムやコンテンツを創り出すことも可能です。さらにOpenSeaなどの外部のNFTマーケットに持ち出すことが可能で売買することも可能です。またNFTであるアイテムやキャラクターは、複数のNFTゲームで互換性を持たせることができます。
DAO(Decentralized Autonomous Organization、自律分散型組織)
DAOとは、株式会社といった運営組織が存在せず、ブロックチェーンソリューションを取り入れた組織形態のことで、スマートコントラクトによって管理される会社構造のことです。
日本企業の動き
グリーの子会社REALITY
2021年8月6日、子会社のREALITY社を通じてメタバース事業に参入すると発表しました。REALITY社はVTuberによる動画のライブ配信を楽しめるスマートフォンアプリ「REALITY」を提供する企業ですが、ライブ配信サービスの「REALITY」をベースにメタバースを展開するとしています。
2022年度よりREALITYのライブエンターテインメント事業を、メタバース事業へと改称し、機能強化に向けて投資を拡大するとのことです。
ポケットクエリー(エムティアイグループ)
MRを活用した3DCG重畳表示による設計・現場支援ツール
VRによる”リモートワーク”と”リモート集合研修”
クラスター
日本のクラスター株式会社が2017年に公開したサービスでこちらもワールドやイベントがあります。スマホやPCからも利用でき、アバターの手なども動かせます。クラスターコインもありますが現金化はできない仕組みです。
三井住友銀行が2021年4月にクラスターで入行式を実施して話題になりました。
ホロライブプロダクション(hololive production)
カバー株式会社が運営する日本のバーチャルYouTuber(VTuber)事務所
VARK
バーチャルライブプラットフォーム「VARK」を運営する株式会社VARK
法的課題
まだまだ法的な部分で多くの課題もあり今後検討されるべきでしょう。
たとえば仮想空間で購入したモノでも、日本の法律では、 現時点では著作権の保護はあるものの、 所有権や占有権といった物権性が認められていないため所有権を主張して保護することはできないなど多くの課題があります。
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